年金追納のススメ。【学生時に納付を猶予した方必見】

日本では原則として20歳~60歳の40年間、国民年金に強制的に加入させられ、国民年金保険料を負担する義務があります。 この義務はすべての国民に課されているもので、20歳以上のまだ働いていない学生であっても支払う義務があります。(企業にお勤めの方は会社が毎月の給料から控除する形で負担することになります。)

しかし、学生では収入がないので(あったとしてもアルバイトなどで少額)、申請により納付を猶予してもらうことができます。この学生納付特例の利用率は学生の約半数という調査結果もありますが、追納で年金額を増やせることを知らない方も多いようです。残りの半数は、親が代わりに支払っている、自分で支払っているということです。自分がどんな状況かわからない場合には、ねんきんネットで確認したり年金事務所に問い合わせるなどして確認することができます。

この学生納付特例を利用した場合には猶予を受けた年から10年以内であれば保険料を後から納付して、通常通り支払ったと同じ扱いにしてもらい、将来受け取る年金を増額することができます。つまり大学3年や4年次に学生納付特例を利用していた場合には30歳~31歳頃までは国民年金保険料を追納することができます。

もちろん、この追納は”できる”というだけで、義務ではありません。何も手続きをせずに追納しないということもできますし、現在の収入の水準などを考え、追納しないという選択もありです。しかし、年金追納ができるのであれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどの資産形成よりも最優先で行うべきことだと思います。理由は後述。

以下の記事の内容は、20歳以上の学生(大学3~4年や大学院進学など)や収入が少ないなどの理由で国民年金保険料の支払いを過去に猶予してもらっていた方を対象とした内容となっています。追納をせずに、60歳を過ぎてから不足する年数分国民年金保険料を負担して満額受給を目指すこともできますが、国民年金保険料は年々上昇していますので、早い段階で追納した方が良いとこちらの記事では判断しております。以下のページの定額の部分の変遷をご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo-hensen/20150331.html

そもそも年金を追納して増える年金額ってどの程度か?

一番気になるところですね。20歳の誕生日を迎える月によって未納付の期間は異なりますが、ここでは2年間(24か月分)とします。誕生月によって24~35か月、留年や浪人や大学院進学など学生であった期間の年数が長い場合にはさらに増えます。 ちょうど10年近く前の平成21~22年に納付を猶予してもらった場合で追納する場合の2年分の国民年金保険料は369,840円となります。正確には納付しなければならなかった金額に期間経過分の利子が少し加算されますので、納付猶予の手続きをした年と経過年数によって異なります。納付を猶予してもらった年がわかるのであれば以下のページでご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150331.html

それに対して納付したことによる年金増加額を計算してみましょう。

40年間国民年金保険料を収めた場合に満額受給すると780,100円/年となります。 満額受給は40年分納付した場合ですので、その2年分ということですので、 780,100円×2/40年=39,005円です。 月当たりで3,250円です。月額でみると大したことないように感じるかもしれませんが、これが生きている限り生涯続きますので。 369,840円の納付で、65歳以降月額3250円の受給額の増額が続きます。

369,840円÷3250円=約114カ月

つまり74歳6カ月以上長生きできれば、支払った分は受給することができますね。厚労省の公表する平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳です。さらに、実際には支払い時点での余命で考えればもう少し高くなるともいます。(平均寿命は0歳時点での余命を表しています。)

ですので、平均的には払い損になる可能性はかなり低いということになります。満額受給の年金額は物価の変動などを加味して毎年変動しますので、あくまでも現在の水準で考えた場合ということです。ですので絶対お得ということは言えないです。加えて、年金を受給する数年後あるいは数十年後には、物価の上昇もあるでしょう。受け取る額面上の金額も少しは増えている可能性が高く実際の物価上昇による影響はいくらか軽減されると考えられますが、あくまでも現時点での試算です。

現在の年金満額受給額は以下を参照。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html

所得税住民税の軽減(社会保険料控除)

加えて、年金追納は、その追納した額全額を納付年の社会保険料控除に使用することができます。いくら軽減できるかは、個々人の収入によります。所得税は累進課税という考え方をとっており、収入が多い人ほど高い税率を負担しなければならない仕組みとなっています。ですので、年金追納の恩恵は年収が高い人ほど大きくなります。

一般的なサラリーマンの年収別の最大所得税率を以下に例示します。 (正確には、会社から給料をもらっている収入だけで副業などを行っていない場合には、給与所得のみとなり、所得額に応じて控除額があります。さらにそこから、給料から天引きされた年金や健康保険料などの社会保険料を控除した金額が課税所得となり、この課税所得の額に応じて税率が決まります。課税所得が大きいほど負担する税額が大きくなるようになっています。個人によって控除額が違いますので以下はあくまで例です。)

~年収400万円程度 最大所得税率5%

年収400~600万円程度 最大所得税率10%

年収600万円程度以上 最大所得税率20%

住民税については一律10%となります。

ですので、追納した年の年収が約300万円であれば、所得税率5%+住民税率10%で、追納額の15%程度の税負担を軽減することができます。 同様に年収が500万円程度であれば追納額の20%程度、年収が700万円程度であれば追納額の30%程度の税負担を軽減できます。

サラリーマンであれば、確定申告を行う必要はなく、年末調整で納付証明書を添付するだけです。 あとは年の最終月に還付されます。所得税の累進課税という仕組みから判断できることは、年収が多い年に年金追納をすべきということです。つまり毎年昇給するような給与テーブルの企業にお勤めで、転職や独立などを予定していないのであれば、10年以内の期限ぎりぎり、学生であれば31歳前後がねらい目となります。

社会人1年目~2年目など給与水準が低いときに納付するのは税負担軽減の効果が小さいことになりますね。転職や独立を考えているのであれば、今後31歳までに収入が最大化する年に追納するのが一番税負担を軽減することができます。

追納の手続きは?

追納の手続きはお近くの年金事務所で行うことができます。 ただ年金事務所が空いている平日に時間をとって行くことはできない方も多いかと思います。ですので年金事務所では年金の追納を郵送でも受け付けています。以下の申請書に必要事項を記入して、お近くの年金事務所あてに郵送しますと、大体1カ月くらいで納付書が送られてきます。
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kokunen.html

納付は、1カ月分や6カ月分など細かく指定することができるので、 毎月1か月分ずつ納付することもできますし、全期間分一括で納付することもできます。また銀行だけではなくコンビニ支払いができるので便利です。ただ、年末調整に間に合わせるには毎年9月末までに納付した方が良いです。9月末までに追納した分の証明はがきを毎年11月ごろに年金事務所が納付者に送っています。

資産運用(iDeCoやつみたてNISA)より年金追納を優先すべきか

まずは資産運用の目的が何か考えましょう。 金融庁の2000万円問題などを発端に、徐々に資産運用の必要性が一般的に意識され始めていますが、これは老後資金が足りないという危機感が大きな理由となっていると考えています。何のために資産運用するかといえば、ほとんどの方は老後生きている間にお金に困らないためということになります。稼ぐ力が若い時より衰えていく人生の終盤で、長生きすればするほどお金が足りないことを気にしながら生きていくのは想像以上に苦しいものだと思います。

そうであるならば、生きている間必ず受給できる年金は、どのような資産運用よりも優先すべきではないでしょうか。ノーリスクですし。つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)で資産運用する必要性もありますし、長い期間をかけてつみたて運用するのであれば大きな利益を得れる可能性が高いといえます。しかし、上で触れたとおり、年金追納は払い損になる可能性は低く、所得税住民税の税負担軽減も考慮に入れて平均的な寿命まで生きると考えれば、資産運用に大きく勝る利回りとなるのではないかと思います。

気になる方はご自身の税負担軽減効果と平均寿命までの年金受給増額分を計算してみてください。納付額の2倍以上、人によっては3倍以上となる方も多くいらっしゃると思います。資産運用も必要ではありますが、まずは、国民年金の基本部分を固めるべきです。

まとめ

実際に受給する金額はここで話している国民年金にプラスして、サラリーマンの方であれば、現役時代の収入額に応じて収めた金額によって変動する厚生年金など別に受給できる仕組みもございますので、あくまでもこの記事は年金の基本部分になる国民年金(全国民の加入義務のある年金 )に関することになります。

・全額納付する場合の必要額の概算は2年分で37万円程度、それに対して増加する年金受給額は年間39,005円

・追納した年の所得税の税負担を軽減できるので、納付を猶予した年から10年以内で収入の最大化する年に追納するのが一番お得。一般的なサラリーマンであれば年齢が上がるほど収入が上がるケースが多いため、年金追納は期限ぎりぎりに行うのが所得税(住民税)上お得。(一般的な学生納付特例利用者であれば30~31歳前後)

・納付書発行手続きはねんきんネットで簡単に作成(手書きも可能)して郵送で申込も可能。不安であれば基礎年金番号を手元に用意して年金事務所に問い合わせましょう。

※追納される方の状況によってはここに記載のようなメリットはない場合もあるかもしれません。実際に追納される場合には、日本年金年金機構HPや年金事務所に問い合わせるなどご自身の状況をご確認の上でご検討の上でお考え下さい。

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